高気圧酸素療法

高気圧酸素療法とは・・・

大気圧下の呼吸で得られる酸素量に対して10〜20倍にまで酸素を体内に取り込みます。それにより体のあらゆる場所の低酸素状態を改善し、血管新生や組織の修復を促進します。また、体内にできた気体を圧縮・再溶解することによる末梢循環の改善効果や、酸素の抗菌作用を利用し、細菌の発育を阻害する抗菌効果も期待されます。

 

[治療機器]
セクリストModel 3300HJ

 

保険適応疾患

空気塞栓、急性一酸化炭素中毒その他のガス中毒、重症軟部組織感染症又は頭蓋内膿瘍、急性末梢血管障害(重症熱傷/凍傷、広汎挫傷、コンパートメント症候群又は圧挫症候群)、脳梗塞、重症の低酸素脳症、腸閉塞、網膜動脈閉塞症、突発性難聴、放射線又は抗癌剤治療と併用される悪性腫瘍、難治性潰瘍を伴う末梢循環障害、皮膚移植、骨髄炎又は放射線障害 など

 

 

治療について

 

・実際の治療は、最大2気圧まで15分間かけて加圧します。
・高気圧状態での治療時間は60分間となります。
・そして、15分間かけて減圧して終了となります。

治療回数は、病態により異なります。

治療例 治療内容
突発性難聴の場合 1日1回 90分 30回まで
放射線又は抗癌剤治療と併用される悪性腫瘍 1日1回 90分 30回まで

 

 

 

< 治療の流れ >


治療の流れは次の通りです。

 

● 更衣(注意点

高気圧酸素治療では、「治療専用衣」に着替えていただきます。
治療中、高濃度の酸素の中で静電気が発生すると、爆発や火災などの重大事故に繋がる可能性もあります。
下着も綿100%のものを着用してください。

● 持ち込みできないもの

更衣と同様で、事故防止のために以下のものはお持ち込みできません。

分類 具体的な商品
発火源になるもの  ライター、マッチ、カイロなど
引火の危険があるもの  油脂類(整髪料、化粧品)
衝撃で火花を発する
可能性があるもの
 補聴器、スマホ(携帯電話)、時計、ラジオ
貴金属、電気製品
密閉されたもの  ボールペン、腕時計、万年筆、体温計など
その他

 

 

 

当院での実際の治療/担当医

患者さんの症状や医師の専門性により、最適な担当医が主治医となり治療を行います。

 

< 癒着性腸閉塞/ガス壊疽などの重症嫌気性菌感染症/一酸化炭素中毒 >


高気圧酸素療法(HBO)は様々な病態に有効な治療法ですが、外科領域では手術後の癒着性腸閉塞や重症感染症(嫌気性菌による)に対して活用されます。また一酸化炭素中毒の治療には欠かせない手段であり、神経学的後遺症を残さないためにも速やかな治療開始が大切です。


外科・消化器外科 正木 裕児

 

< 突発性難聴、骨髄炎又は放射線障害 >


耳鼻咽喉科領域で高気圧酸素治療を行う疾患には突発性難聴と放射線性(下顎)骨髄炎が有ります。前者では高度難聴の方を対象に主に入院して行います。後者では大学病院等の口腔外科から難治性の方を紹介され、口腔外科の治療との組み合わせにより、主に通院で行っています。いずれも1日1回行い、上限は30回です。


耳鼻咽喉科 木﨑 久喜

 

< 放射線又は抗癌剤治療と併用される悪性腫瘍 >


骨盤内悪性腫瘍に対する放射線療法の晩期合併症のひとつである放射線性出血性膀胱炎は極めて難治性で時には致命的になります。疾患の本質は低酸素状態にあり、高気圧酸素療法により血液、組織の酸素分圧を上昇させ低酸素状態を改善し組織の修復能力を高めます。


泌尿器科 賀来 春紀

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